はじめに
労働衛生コンサルタントは労働衛生のスペシャリストとして労働者の安全衛生水準の向上のために事業場の診断・指導を行う国家資格です。合格率は約30%と難関を極める資格です。
労働衛生コンサルタントについての具体的な解説はこちらを参考にしてください。
労働衛生コンサルタントの試験は筆記試験と口述試験で構成されています。今回は労働衛生の知識ゼロから確実に合格を目指す筆記&口述勉強法を徹底解説します!
勉強スタイル
筆記試験も口述試験も
「過去問をベースに参考書や資料で知識を整理して覚えていく」
が基本となります。
知識がない状態でもまずは過去問に挑戦していき、参考書や法令を参考にしながら知識を整理していきましょう。
筆記試験と口述試験では使用する教材が異なるためそれぞれ分けて説明していきます。
試験科目
労働衛生コンサルタントには①保健衛生と②土木・建築の2種類の区分があります。医師が労働衛生コンサルタントを取得する場合には①保健衛生の区分で取ることがほとんどです(産業医要件としても保健衛生区分である必要があります。)。
筆記試験の合格率は約50%、口述試験の合格率は約60%です。いずれの試験も難易度が高い試験となっています。
①保健衛生の筆記試験科目と口述試験内容について解説します。
筆記試験
試験会場は以下のとおりです。
試 験 地 | 北海道安全衛生技術センター | 東北安全衛生技術センター |
中部安全衛生技術センター | 兵庫県内(神戸サンボーホール) | |
中国四国安全衛生技術センター | 九州安全衛生技術センター | |
東京都内(ベルサール渋谷ファースト) |
試験科目は以下の3科目となります。
- 労働衛生一般(択一式)試験
- 労働衛生関係法令(択一式)試験
- 労働衛生関係記述式問題(筆記)<健康管理>
医師であれば試験免除が適応され、労働衛生関係法令(択一式)試験だけ受験すればよいことになっています。
産業医学講習会を受講すれば筆記全免除となるのですが今回は割愛します。
労働衛生関係法令(択一式)試験では労働衛生に関する法律の知識を問われます。15問で構成されています。出題範囲の法令は幅広く、細部を変化させて出題されるため十分な対策が必要です。
試験範囲の法令は具体的には以下の通りです。
- 労働安全衛生法(施行令、規則)
- 粉じん障害予防規則
- 特定化学物質障害予防規則
- 有機溶剤中毒予防規則
- 電離放射線障害予防規則
etc・・・
幅広い法令の中でも頻出範囲は限られてくるため、初学者でも複数年の過去問の繰り返し演習で対策することは可能です。
口述試験
試験会場は大阪(1月中旬)と東京(2月初旬)の2つです。
口述試験は約15分間の面接です。
試験官3人各々から質問を受けます。質問内容は以下のようになっています。
- 労働衛生コンサルタントの受験理由
- 産業医と労働衛生コンサルタントの違い
- 特定化学物質、有機溶剤、粉じん、石綿、騒音、熱中症予防、近年の労働衛生統計など実務に関する内容
教科書に書かれた内容だけでなく、実務上の内容(教科書には書かれていないが実務をしていれば答えられる内容)を聞かれるため実務経験や実務ベースの勉強が必要です。
教材
<筆記試験>
以下の5つの教材を用います。
- 労働衛生コンサルタント試験問題集
- 衛生管理〈下〉ー第1種用
- わかるわかる第一種衛生管理者試験
- スッキリわかる第1種衛生管理者 テキスト&問題集
- これ1冊で完成!労働衛生コンサルタント試験 筆記試験対策 参考書&問題集 2024年新傾向対応
労働衛生コンサルタント試験問題集
日本労働安全衛生コンサルタント会が出版する問題集です。各回の問題ごとに詳しい解説がついており、実際に労働衛生コンサルタントが解答作成をしているため信頼度が高いです。インターネットでも過去問と答えを入手することはできますが、この問題集が一番解説が丁寧で体型的だと思われます。
日本労働安全衛生コンサルタント会HPにて過去8年分にさかのぼって購入可能です。
衛生管理〈下〉ー第1種用
労働衛生法令の便覧として活用します。上巻・下巻がありますが、労働衛生関係法令の問題に必要な法令は下巻に収録されています。法律をわかりやすくまとめているため初学者にとても使いやすいです。
わかるわかる第一種衛生管理者試験
労働衛生関係法令の内容をよりわかりやすく解説した参考書です。労働衛生コンサルタントの試験範囲は第1種衛生管理者と共通点が非常に多いです。第1種衛生管理者は受験者も多いため市販されている参考書が充実しています。その中でも比較的細かいところまで記載されていて、労働衛生コンサルタント試験対策に活用できます。
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スッキリわかる第1種衛生管理者 テキスト&問題集
知識ゼロの状態から法令を整理するのに最適な参考書です。わかりやすい文体とマンガで解説されているため、法令の抽象的な内容でも抵抗なく学ぶことができます。第1種衛生管理者試験の過去問も掲載されているため知識を整理しながら勉強ができます。
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これ1冊で完成!労働衛生コンサルタント試験 筆記試験対策 参考書&問題集
筆記試験に特化した参考書と問題集の融合書です。約100ページでまとめられているためコンパクトであり、短い期間で法令関係の全分野を俯瞰することができます。合格するための知識量としてはやや不十分ですので、勉強し始めたばかりで知識をキャッチアップする教材として活用すると良いでしょう。
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<口述試験>
勉強法のカテゴリで詳しく説明しますが、グループを作ってお互いに面接練習をすることがおすすめです。グループ練習に必要な参考書と、知識整理に有用な講習会を紹介します。
参考書
- 労働衛生のしおり
- 労働衛生コンサルタント問題集 口述試験対策 2023年新傾向対応
講習会
- 口述試験受験準備講習会
労働衛生のしおり
労働衛生のバイブルとも言われています。
近年の労働衛生に関する統計データや事例、労働衛生一般に関する具体的な内容がわかりやすく記載されています。口述試験の勉強をする際に便覧として活用しましょう。
具体的には次のようなカテゴリーについてまとめられてます。
- 全国労働衛生週間実施要綱
- 労働衛生の現況
- 最近の健康管理等の動向
- 最近の労働衛生対策の展開
- 労働衛生関係法令・指針・通達等
- その他の法令・通達等
- 主な職業性疾病事例
口述試験の試験官は「労働衛生のしおり」を見ながら出題しているという噂が出るほど試験範囲と本の内容が被っているため参考資料として活用したい1冊です。
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労働衛生コンサルタント問題集 口述試験対策 2024年新傾向対応
口述試験には公式の過去問題集がありません。Amazonには労働衛生コンサルタントが作成して販売している再現過去問集が多数販売されています。試験会場や面接時に気をつけたよい事柄や実際の雰囲気、合格者の解答例がまとめられているため1冊を徹底演習すると効果的な対策ができます。
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口述試験受験準備講習会
毎年12月ごろにオンラインと実地の両方で開催される口述試験対策講座です。労働衛生コンサルタントの先生が出題範囲の要点をまとめた膨大なスライドを用いて、試験のポイントをひたすら解説していく講座となっています。
試験範囲が膨大かつ詳細なため、講座内の対策だけでは不十分ですが、今日の労働衛生のトレンドや出題傾向を把握することは可能です。スライドは資料として非常に有用ですのでぜひ受講することをおすすめします。
申し込みは例年10月ごろになります。申し込み期限を過ぎると受講できないためホームページをしっかりと確認しておきましょう。
勉強方法
<筆記試験>
労働衛生関係法令の筆記試験対策は3つの段階に分けられます。
- 過去問演習(弱点や未知領域の洗い出し)
- 参考書で内容理解
- 法令を確認し整理(衛生管理〈下〉を活用)
過去問演習
先ほど紹介した過去問題集を使用します。最初はほとんど正解できないと思われます(期待値的に3問正解程度か)。数年分の問題を解くとある法則性に気づきます。各法令の中でも特定の分野しか出題されません。
例えば、労働安全衛生法では衛生管理者/産業医などの選任条件は毎年問われます。特別教育の実施要件、作業環境測定の実施要件、健康診断に実施内容など例年の「鉄板ネタ」があります。「鉄板ネタ」のテーマに関して毎年設問を変えて問われるため、過去に遡った過去問演習が必要ですし、逆に言えば、過去問演習を十分に行うことで確実に攻略することができます。
参考書で内容理解
過去問で問われた内容を参考書で体型的に学習することが知識定着に有効です。法令で定められた要件や条件は「わかるわかる第一種衛生管理者試験」にわかりやすくまとめられています。一方で製造禁止物質や特定化学物質の分類、電離放射線障害防止など、法令の中でも実務的な内容に関しては「スッキリわかる第1種衛生管理者 テキスト&問題集」にまとめられています。
過去問と参考書を往復することで確実に知識を定着させていきましょう。
法令を確認し整理
参考書で知識を整理することも重要ですが、最終的には法令に準拠し、原文で内容理解をし、問題集や参考書では触れられていない箇所を確認する必要があります。毎年設問を変化させて出題するため、重箱の隅を突いたような内容が出題されることがあります。試験本番で安定して正解するためには法令の内容に一度目を通しておくことで知識の幅を広げる必要があります。
過去問→参考書→法令のサイクルを繰り返すことによって盤石な知識を身につける必要があります。
<口述試験>
口述試験対策はグループ勉強会が一番有効です。座学だけで勉強していても口述に対応した知識は身につきません。
グループ勉強会はTwitterなどで受験者を募るのが有効ですが、すでにこちらのような勉強会が無料で開催されています。口述試験の練習をしたいからはぜひ参加してみてください。
グループ勉強会で用いる教材ですが先に紹介した問題集がおすすめです。典型問題を幅広くカバーしているだけでなく、昨年度出題された新傾向問題も収録しています。
また情報がデータベースにまとめられており、一目で内容を理解しやすい工夫がされています。
問題集の質問を出題し合うことで自分の言葉で回答する練習をしましょう。
日本労働衛生コンサルタント会が主催する口述試験準備講習会もおすすめです。「化学物質の自律的管理」など最新の労働衛生トレンドを専門家が詳しく解説します。口述試験では労働衛生に関する近年の事例が聞かれることもあり、これらは書籍では勉強しにくい分野ですので講習会で補うのがおすすめです。
勉強スケジュール
労働衛生コンサルタントの筆記試験&口述試験の対策スケジュールを紹介します。
筆記試験対策には3~4ヶ月ほどの対策期間を用意しておくのが安全です。合計120問(15問/年×8年)の択一問題を解いていき、法令と背景知識を理解して覚える作業をしていきます。
口述試験対策は10月中旬に筆記試験が終了してからで間に合います。筆記と口述では問われる内容も異なるため同時並行で勉強することはあまり効率的ではありません。
労働衛生コンサルタント試験では同じ年度に筆記試験と口述試験の両方に合格する必要があります。試験対策期間は7〜2月と7ヶ月間にも及びます。
勉強時間の確保も大きな問題になってきます。特に試験直前の1ヶ月間は知識を詰め込む期間ですので、可能なかぎり勉強時間を多く確保することが重要です。
まとめ
労働衛生コンサルタントは合格率約30%の難関資格です。しかし適切な対策を取ることで高い確率で合格することは可能です。今回紹介した勉強法は複数の労働衛生コンサルタント試験合格者の共通点を抽出したものです。再現性が高い勉強法となっているためぜひ参考にしてみてください。
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